吉祥寺・町田 高橋巖人智学講座および「ソフィアの会」の独り言・2016

 

    

                       

 

 

 

 

吉祥寺講座

 

 

[バガヴァッド・ギーターとパウロの書簡]

 

 

1月9日☆プルシャ(霊魂)原理とプラクリティ(エーテル体、アストラル体も含む物質)原理。

 

    私には、自分は他の誰とも違うという実感、自分の中のプルシャの実感があるか。

    自分の中のかけがえのない個性をどうやって実感できているのか。

 

    プルシャの実感のために芸術がある。

    どんな日常の中にもプルシャ、芸術が見える。

 

    私たちは、三千年間進化してきたと思ったのに、プラクリティの物質の部分だけを発展させてきた

    んじゃないか。

    プルシャに意識が及んでいないんじゃないか。

 

 

 

2月6日☆近親者との戦いにはげしく苦悩するアルジュナに、師クリシュナは、

    

    無常なこの世の中で、霊的な現実と関わろうとするとき、この世の現実にこだわってはいけない。

    「戦争に巻き込む無常なものから、生命の不滅さへ眼を移」せ、と諭し、

 

    無常なものの網にからめとられているアルジュナの魂を、高みへ引き上げようとする。

 

    三千年前に語られた、「無常ならざるものへの人間の道」バガヴァッド・ギーター。

 

 

 

3月12日☆第三講でシュタイナーは「ギーター」やサーンキヤ哲学、ヨーガとの出会いを「運命的な」も

    のとして受けとめるように、と呼びかける。

    

    「ギーター」や「パウロの書簡」から、運命的なものが私たちに立ち向かってくる。

 

     しかし、自分で出会おうとしないと運命とは出会えない。

     

     「運命」として出会うか。

     単なる知識として出会うか。

 

     読書は運命だ。読むことが自分の中に運命を生じさせる、という読書法。

 

 

 

3月26日☆古代では、偉大な統治者、諸民族の上に君臨する指導者になるべき存在であるマナス(霊我)を

     体現した人物が現れた。支配者と被支配者ははっきり分かれていた。

 

     しかし意識魂が成熟しようとしている今の時代の人間には、存在として優劣はあり得ない。

     どんな人の中にも神が宿っている。その神と自分との関係をどうつけるかはその人の問題で、優

     劣ではない。

 

     だからこそ、「自分は優れている」ことを人に示したい人は、シュタイナーにとってはそこから

     は何も始まらない。

     自分は最低な奴だ、私たちはみな悪魔だ、と思えるか。

 

     悪人正機。

 

 

 

5月7日☆第3講

    クリシュナは自分だ。自分の中にクリシュナが生きている。クリシュナは人類そのもの。

    -だから自分の中に人類が生きている。

    

    「ミクロコスモスに対するマクロコスモス…そのように個々の人間に対して、クリシュナが立っ

    て」いる。

    -だから私は宇宙だ。私の中には宇宙のすべてがある。

    

    神秘学とは何か-宇宙と個人がひとつだという教えに他ならない。 

 

 

 

6月11日☆第4講になって、ようやくシュタイナーが、「ギーターとパウロ書簡」というテーマを選んだ理

     由がわかってきます。

     しかも、重要な人智学協会設立記念講演として。

 

     サーンキャ哲学で言えば、ギーターの時代は、サットヴァ状態だった。それからゴルゴタの秘蹟

     の生じる第4文化期がラジャス状態、現在の第5後アトランティス文化期がタマス状態。

 

     私たちは、物質の闇のタマス状態の中でこそ自我を育て、エーテル感覚を生かすことで、未来の

     サットヴァ状態を準備する。

 

     *サットヴァ状態(魂>肉体。叡智と善)、ラジャス状態(魂=肉体。情熱、激情、生きること

      への渇望)、タマス状態(魂<肉体。怠惰、眠気)

 

 

 

10月15日☆暗黒の時代を生きる私たち。

 

     この世への向き合い方がますます真剣にならなければ、先に進めない。

 

     自分は悪人だ、と思えるか。

     自分は立派な人間だ、と思うのか。

 

     物質を超えても、アーリマンとルツィフェルが私たちに対峙する。

 

     キリスト衝動の灯(ともしび)を、私たちは皆持っている。

     自己矛盾の葛藤、戦いを続ける中で、その灯がいつか大きな力になってくれるはずだ。

 

 

 

11月26日☆今は、内面生活が戦いを繰り返している時代。

     内面を見るとき、戦いを感じとれるなら、今の闇の時代を生きている。

 

     自我のキリスト的部分、アーリマン的部分、ルツィフェル的部分…

     内面では、キリストとアーリマンとルツィフェルが三つ巴になって戦っている。

 

     一日五分間だけ、内面に沈潜する。

 

    「人間は、血の結びつきから解放されるだけでなく、プラクリティ(物質)から、一切の外的なこ

     とから解放されるのです。そして内的に一切の外的なことと決着をつけなければなりません。そ

     うすればそこに、キリスト衝動が入ってくるのです。」

 

 

 

 

     

     

 

 

     

 

 

・町田講座

 

 

[人間の自己認識へのひとつの道(1912年)]

 

 

1月12日☆植物を芸術的に体験する。

 

     植物の背後に生きた力が働いている、とイメージ(瞑想)する。

     それをしたことがあるか、ないかで外界への関わり方が変る。

 

     植物の芽から流れてくる力を感じとる=エーテル体験=芸術体験。

 

     感覚と知性を超えた帰依の体験、第三の体験へ。 

     ほんの一瞬でも、それは魂の力を強める。 

 

 

 

 

2月2日☆第三の瞑想・後半。

 

    心を空にして待ちながら、何かが入ってくる状態を作る。 

    その繰り返しが魂の力を強める。

 

    「外的体験と内的体験が、生きているという実感の中で融け合う。」

 

    体験はできても表象はできない、生命感情。

    ・・・だから「望ましい瞬間を心静かに待つ。」

 

 

 

3月15日☆第四の瞑想・前半。

 

     魂が超感覚的な外界と融合すると、内界が内界だと思えなくなり、自分の感情が自分だけのもの

     ではないことに気がつく。

 

     すると自分の感情が負担になり、今までの方が楽だ、更に一歩踏み出すことなど到底できない、

     と思ってしまう。

 

     自分は不完全なままだ、自分は否定されている、という苦悩。

 

     その時に必要な内なる勇気、内なる大胆不敵さは、「真の」自己認識からしか得られない。

 

 

 

6月14日☆第五の瞑想

 

    「お茶を飲む」「コーヒーを飲む」「空気を吸う」…

     日常の何気ないことは、何でも芸術的にできる。

 

     特別なこと、特別な瞬間、にできる。

 

     日常と非日常は自分で自由に変えられる。

 

     芸術体験、すなわちエーテル体験=超感覚的体験。

 

     エーテル体は一瞬で目覚めて、いつでも意識化できる。

 

     集中して向き合うと、相手に自分のエーテル体が流れ込む。

     色々な対象に向って自分のエーテル体を目覚めさせる。

 

     そうして「魂の力を強め」ておく。

     アストラル体を体験する時の、「言いようもない孤独感」に耐えられるように。

 

 

 

10月11日☆第五の瞑想ー瞑想する人は「アストラル体」を表象しようと試みる

 

       第六の瞑想―瞑想する人は「自我体」もしくは「思想体」を表象しようと試みる

 

 

      高橋先生は「シュタイナーはこの書を、人に「わからせまい」として(わざと難解に)書いて

      いる」と言われます。

 

      たしかに…

 

      だからただひたすら読みます。

      

      今回、先生からの「お願い」は、「5回読んで、1回毎に感想文を書く、どこでどういう問題

      をもったか。」でした。

      

      「読む」ことが「体験」につながります。

 

 

 

11月15日☆「霊的本性たち」とは、「意味のあるもの」。

      霊的な何かが見えるかどうか、は「意味が感じられるか、どうか」。

 

      霊的な世界=意味の世界。 

      誰かと会ったとき、その誰かの存在する意味を感じられるかどうか。

                 ・・・存在していることの価値を感じとれるかどうか。

 

      知性ではなく、感性で相手を理解する。

      そうすればますます相手が大事になってくる。

      

      

 

      シュタイナーは、この書でアイスキュロス以来のドラマの原点を描いている。

      それは誰もが体験している、主人公が自我のドラマ。

 

      エーテル体、アストラル体、自我体の中で演じられるドラマ。

      内面の葛藤、喜び、悲しみ、辛さ、内と外との矛盾…

 

      理屈ではなく、どこまでもドラマ。

      

      

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ソフィアの会

 

 

[神殿伝説と黄金伝説]

 

 

1月13日☆昨年末に国書刊行会から再版された本書は、

     1904年から6年にかけて神智学協会内で行われた非公開講義の記録である。

 

     最初の「五旬祭」の講義。

     

     「人間が、霊的生命の火花を自分の内に燃えたたせることができるまでに、また人間の肉体が進

     化しようとみずから試みるとき、聖霊は人間の頭上に現れて、霊の目覚めるときが来るでしょ

     う。」

 

     「復活祭は自然界における復活の祭であり、聖霊降臨祭は人間の霊を意識化するための象徴であ

     り、知ること、認識すること、自由を求める人びとの祭の象徴です。」

 

     「…この聖霊を理解する火花を、誤って理解されてきた聖霊降臨祭の中へふたたび流れ込ませて

     ください。」

 

     「なぜなら私たち人間は、夢見るような、中途半端でうすぼんやりとした暮らしをするためにで

     はなく、私たちの存在すべてを自由にし、完全な意識を発揮させるために生きているのだからで

     す。」

 

     なんと力強い言葉だろう。

 

 

2月24日☆「かつて失われ、今再建されるべき神殿」

     世界を支配している偉大な法則は、霊的な働きから生じている。

     だから神智学の原則から生活実践へ向わなければらない。

 

     神智学の法則を知らずに、社会改革はできない。

 

     神智学は、ただの理論ではなく、世界中でもっとも実用的なもの。

 

     「社会の主要法則」の源泉が、そこにある。

 

 

 

 

「ルドルフ・シュタイナーの社会論からベーシックインカムの思想へ」

 

 

3月30日☆いよいよ始まった社会論。

    

    シュタイナー『社会問題の核心』を一章ずつ読みながら、自選図書の紹介もします(詳細な予定は

    日本人智学協会HP「ソフィアの会」を参照して下さい)。

 

    しかし『社会問題の核心』はかなり難解なので、お勧めは昴発行の『シュタイナー社会論入門(シ

    ュタイナーにとって社会とはなにか)』です。

    

    これは高橋先生が2010年に『社会問題の核心』について京都で行った集中講義の講義録で、とて

    もわかりやすい。

 

    ちなみに始めの方をざっと拾い読みしてみる・・・

    

 

     社会が第二の肉体だと感じられるか。

     まわりのすべてと自分はつながっている(社会は生きものだ)、という感覚。

     社会感覚とは、相手の魂に身を置くこと(雨宮処凛「全身当事者主義」)。

 

     精神生活=一人が絶対。一人ひとりまったく違う。量の原則が通用しない。自然科学的発想はだ

         め。「自由」でなければいけない。

 

     法生活=一人ひとり、数量化される。まったく同じ権利だから多数決も年齢制限もあり得る。

         「平等」でなければいけない。

 

     経済生活=勝ち負けがある。勝ち組が負け組の配慮をする。労働の場は暖かく、「友愛」でなけ

         ればいけない。

        

     ベーシックインカム。。。社会を「自分たちの社会」にするために。

 

                           

                                ― もっと読みたい方は、「昴」https://jinchigaku.wordpress.com/までどうぞ。

 

 

 

4月20日☆「社会論」の勉強をもっと充実させるために、高橋先生の提案で、5月以降は以下のように変更

     になりました。

 

     5月:『社会問題の核心』の「まえがき」「まえがきと序論」「第1章」の内容を一人がレポー

      トし、それについて全員で話し合う。

     6月:「第2章」の内容を一人がレポート、全員の話し合い。

     7月:「第3章」について各人が感想を述べ、さらに社会論に関する自選図書一冊を紹介する。

     8月:夏休み

     9月:「第3章」のレポートと話し合い。

     10月:「第4章」と次の「はじめに」「国際生活の必要性と…」についての各人の感想と自選図

       書紹介。

     11月:そのレポートと話し合い。

 

     ここまで決まっています。

     皆さん、どうぞご参加ください。

 

 

5月18日☆「まえがきと序論」「第1章」のTさんによる詳細で広範囲なレポートに続いて、労働力の商品

     化について、精神生活が自由であること、社会意志とは何か、生活内容になった精神性につい

     て、など話し合いました。

 

     さらに今話題の都知事の政治資金虚偽記載問題について、「だいたい、会社で見ていてもおじさ

     ん(失礼!)はケチだから、やりそうなこと。テレビで批判している人たちも、本音は「うまい

     ことやってる」くらいに思ってるんじゃ…?」

     という意見もありましたが、東京新聞の5月18日「本音のコラム」(斎藤美奈子)の記事が紹介

     されました。

 

     つまり、先の都知事が辞任に追い込まれた時は、特定秘密保護法の審議がヤマ場を迎えていた。

     今回は、パナマ文書や五輪招致の裏金問題。それらから国民の目をそらさせて、次の選挙と知事

     選が重なれば、報道は知事選候補者一色に偏って国政選挙はかすみ、投票率は落ち、結果、与党

     の大勝という筋書き。。。

 

     余談ですが、同じく東京新聞5月17日「紙つぶて」(中野晃一)には「石原慎太郎元知事(の時

     の額)はこんなものではなかったのに、最後までメディアの追及がなかった」し、そもそもこ

     の問題がなぜ今なのか。五輪の裏金工作、そして招致演説で原発事故は「アンダー・コントロー

     ル(制御されている)」と言った最高責任者は安倍首相であり、都知事追及でうやむやにする作

     戦か…とあります。

 

 

6月15日☆『社会問題の核心』第2章。

     Oさんが、自分の職業と精神生活(やりたいこと)の歴史を並列してみずからを振り返りつ

     つ、レポート。

      

     労働力の商品化について、プロレタリアにとって精神生活がイデオロギーとはどういうことか、

     労働とは何か(眠ったり、起きたり、一人の人間が存在していることは社会的なことであり、そ

     れが本来の労働)などなど、活発な意見が交わされました。

 

     途中、「社会主義社会の時は生活が保障されていたが、資本主義社会になって毎日の生活が心配

     で考えるゆとりがなくなった」というテレビのインタビューが紹介されました。

 

     これこそ資本主義国家の思うツボ。

     国民は毎日食べるためだけにあくせくして、モノを考える余裕を与えられず、政府の言うことに

     従ってさえいればいい、という。

     

     モノを考えよう。

     自分とは何か。自分は本当は何がしたいのか。自分はどう生きたいのか。

 

     だから、国はベーシックインカムを拒絶する。

     誰もが、経済的、時間的なゆとりをもって生きられる社会では、皆、モノを考え、実行するか

     ら。

 

     毎月お金を貰ったら働かなくなる、という声がメディアでよく取り上げられるが、あれは雇用

     者側がベーシックインカムを導入させないための策略だ、という意見も出ました。

 

     つまり、「(BIが導入されたら)こんな時給じゃ、もう働いてもらえない!」という雇用者側

     の危機意識の表れだと。

 

 

     最後は発表者Oさんによる、「矢野絢子、踊る!!」。

    

     矢野絢子が大好きなOさんが、彼女の曲に乗って会場を所狭しと踊りました。

     とても素敵な踊りで、素晴らしかったです。

     

     観た人の感想:楽しかったぁ!/すごいね!/自分も一緒に踊りたかった/

            観ていて呼吸が楽になった/今度はお酒を飲みながら観たい!etc

 

 

 

11月23日☆『社会問題の核心』第4章ー三分節化から見たこれからの国際関係

 

     担当はYさん。

     第4章の内容を4つにまとめたレジュメには、それぞれに討議テーマがありました。

 

     1、目標とすべき国際関係

     -「真の人間衝動を満足させるような生活目標を提示することが大切である」とあるがそれは

       どのようなことか。これまでの議論を踏まえて考えてみたい。

 

     2、社会の癌と向き合う

     -自分たちの人生問題と社会癌の関係について検討しながら、現代の日本社会の中でいかなる

      社会癌があるのか討議したい。バッシングは避けながら冷静な目で検討したい。

 

     3、ヘルマン・グリムの願い

     -統一国家の維持と「軍備」について述べられています。この問題にどのように考えるべきなの

      か。リアリズムとイデアリズムの葛藤がありますが、三分節化を踏まえて検討したい。  

     

     4、新しい課題

     -シュタイナーが述べる「時代のしるし」とは何かを検討した上で、われわれの「時代のしる

      し」とは、何か。を一緒に考えたい。

 

     そしてYさんの進行のもと、さまざま活発な意見が出ました。

     

     自由への衝動、技術と産業と営利主義、精神生活の自由は愛と結びつく、日本の軍備は実は世界

     第5位、エゴイズムを人類全体のエゴイズムにまで広げる、「時代のしるし」=いじめ…   

     等々と多岐にわたっていて、ここで紹介しきれません。6時半から9時まで、皆さんお疲れ様でし

     た!

 

     次回は、その次の「社会有機体三分節化をめぐって」と「国際生活の必要性と社会の三分節化」

     を読んだ各人の感想と自薦図書一冊の紹介です。

 

 

 

 

 

    

 

番 外 編・・・

☆神秘劇研究(大井町・きゅりあん4月29日)と講演会(下丸子・大田区民プラザ4月30日)の報告です。

             

 

 

第一回神秘劇研究

 

神秘劇を読み解く

 

                                        (鈴木胖・参考資料)

                                        

1、神秘劇の構成と朗読劇としての公演について        鈴木胖(神秘劇構成・演出)

 

 

神秘劇のポイント。その一はベネディクトゥスの語る「運命の結び目」という言葉。「マリア、あなたの悩みは運命の結び目のひとつです。」自分の運命は自分だけの運命ではなくて、色々な人、あるいは霊との結び目が運命になっている。

 

その二「時代の転換期」=第四部第七場・八場の地球の第三文化期。時代の転換点に気づくことができるのは、時代の転換点にいる人だけ。私たちが今、時代の転換点にいるということが、このドラマで確認できる。

 

その三、例えばマリアとヨハネスとの関係=ヒュベルニアの聖地での出会いと第三文化期のエジプト神殿での関わり。それらが現在の二人の関係の根底にあることがインカネーション(輪廻転生)として確認できること。

 

神秘劇を朗読劇としてやる一番の意味とは、出演者がテキストの内容を単に伝えるのではなく、登場人物がもっている霊の要素や魂の働きを朗読を通して担いながら伝えることができることにある。

 

 

 

2、ヨハネスの4部に亙る変遷について            竹腰郁子(神秘劇ヨハネス役)

 

 

「伝授の門」=「おお、人間よ、汝自身を知れ!」という自己認識の洗礼を受けたヨハネスは、導師ベネデ

      ィクトゥスの弟子として霊的な体験がはじまるが、まだ主観と誤謬に留まっている。

 

「魂の試練」=恋人マリアに突然別れを告げられたヨハネスの整理のつかない思いに、アーリマンが人間の

      姿をとらせて生き霊(ドッペルゲンガー)にする。14世紀前期を霊視するヨハネスたち。その

      前世に由来する印象を受けとってより高次の段階に達するとルツィフェルの誘惑が生じ、ルツ

      ィフェルに従うヨハネス。

 

「境域の守護霊」=「伝授の門」からほぼ13年後。ヨハネスはルツィフェルの元にいる。ルツィフェルに立

      ち向かうマリア。ヨハネスの生き霊が、ルツィフェルのしわざでテオドラを求める。第二の自

      己を体験するヨハネス。

 

「魂の目覚め」=昔の幸せだった頃のマリアへの妄想に浸るヨハネス。第二の自己と通常の自己と調和でき

      ずに二つの自己の間をうろうろする。そんな彼にルツィフェルがつけこんで、若いヨハネスの

      霊を生じさせる。「影の存在」である霊を生み出してしまったヨハネスは宇宙の果てに行って

      しまう。霊の領域。「宇宙の真夜中」でのマリアたちの深い体験が、地球の第三期を霊視させ

      る。ヨハネスは前生の一人、エジプト人女性を霊視し、マリアとともに「影の存在」を解放す

      る。シュトラーダーは死ぬが「君は霊の星となって二人を照らし続けるだろう」とベネディク

      トゥスがシュトラーダーの霊に語りかけて終る。

 

 

 

3、神秘劇4部を翻訳して                      高橋巖(インタヴュー)

 

 

この翻訳は未完成なので、一般に公開する時には手を入れなければならない。

 

「神秘劇」は、シュタイナー自身の自己表現だと私は受けとっている。登場人物は、シュタイナー自身の内部の一人ひとり。私たちも自分自身の内面生活だと思って読むと自己認識の刺激を受ける。そして自分の内面に深く入っていくと自分が悪人だということに気がついたり、カペジウス教授とシュトラーダー博士のように、自分の内面が混沌として魂は傷だらけでつい自己否定に向き合いたくなるが、それこそが道なんだということもいろんな場面で教えてくれる。

冒頭、序幕のエステラとソフィアが最初にシュタイナーの思いを語る。神秘劇全体を読んだ後で、この序幕を読むとまた新しく始まる、という感じがする。

 

シュタイナーは、この劇を舞台で上演するためだけでなく、「レーゼドラマ(読むドラマ)」としても書いてくれた。ゲーテの『ファウスト』同様、観客は自分自身と向き合うことで、登場人物一人ひとりが私たち自身の中にいる、自分の内面の旅だとも思えてくる。それがレーゼドラマの本来の趣旨だから。

 

 

 

 

 

 

第二九回人智学講演会

 

社会意志としてのベーシックインカム2016

                                (文中BIは「ベーシックインカム」の略)

 

 

 

生きる社会、生かす社会、蠢くわたし。                    吉田浩

 

 

BIとは具体的に言うと、日本社会に住んでいる人全員に無条件に毎月例えば20万円支給するということ。BIの制度は誰もが文化的な生活を送る権利がある、という当然のことを実現しようとする権利の問題。「最低生活保障」ではない。毎月20万円がバカらしいとか、そんなことできる筈ない、と言う前にそういう生活を一度は想像してほしい。

 

社会有機体三分節化というシュタイナーの社会思想では、社会は精神生活と経済生活と法生活に分かれる。しかし現実は経済生活と国家・法生活(経済資本と主権国家)が癒着している。精神生活における自由、経済生活における友愛、法生活における平等が重要。

 

実は経済生活における友愛は実現されているのに、それがまったく見えなくされている。今は完全に分業制だから、実際には全員が他の人のために働いている。本来の友愛なのに、お金のために働いていると思い込んでいる。BIでは労働を経済生活から分離させて、精神生活が片手間なものにならないようにする。精神生活が片手間なものになって、癒着した経済・国家生活をどんどんのさばらせてしまった。

 

一人ひとりが自分の中の自由、平等、友愛をイメージして社会にどう関わるか、どういう社会が望ましいと思うのか考えていかないと、経済と政治が癒着したままの国家に対して対抗しようがない。今どういう社会を望んでいるのか、具体的にイメージして意識的に社会を作っていく。そうでないと、結局押しつぶされてしまう。理想は決して空想ではない。

 

 

 

 

ベーシックインカムへの私の一歩は内面から                    内山真由子

 

 

高い理想を掲げた日本国憲法に流れ込んでいる先人たちの熱く深い思いを引き継ぎたい願いを持つと、25条の今の社会での現実化にふさわしいのは、BIであると思える。

全ての人に無条件で同じ額の現金を配布するBIです。

 

人は例外なく、だれとも違うかけがえのない「自分になる」ためにこの世に生れ、生き続ける存在なのだから。このことは、保育を通した子どもの姿から実感できたことです。子どもたちは一人残らず、月齢年齢に応じて一瞬一瞬を全身全霊で体験し、全力で思いを巡らし、判断し、決断しながら生きています。

このような人間が人生を全うするためには、共通して必要なこと(教育、医療、育児・保育、養老・介護)の無償化と、誰とも違うことを支えるためのBIについて考え、様々な人と話し合いたいです。

 

だれもがこの世を離れるその時まで、自分になろうと生き続けられるために。

 

                              (参考文献・木村草太『憲法の創造力』NHK出版新書)

 

 

                                   

世界のカタチ                    樋口一明

 

 

現在、困窮者支援をやっている。生活保護受給者数は2015215万人。9年後には団塊世代が75歳以上になり、後期高齢者が30%を越えて超高齢化社会を迎える。今なんとか自助努力でしのいでいる団塊世代が生活保護に頼らざるを得ない状況になる可能性は大。生活保護費、医療費、介護費等の社会保障費が膨大に膨れ上がる。その備えは日本の政策の中には見当たらない。他にも、若年のホームレスや子どもの貧困問題等々。

 

私がこの世界、状況にいかに関わるか。どうすれば主体になれるのか。ニーチェ「足下を掘れ、それに泉あり」はひたすら能動的に自分を捉えなおす言葉。

 

1.自分がこの時代、この場所に意志をもって生まれてきたことを感情で肯定する。

2.自分が生きてきた経過を感情で肯定する。

3.自分が社会にどう関わってきたのか、また関わろうとしているのか、その意志と感情を対象化する。

 

BIは精神問題から、内発的な要求から生まれる。私は東北が大好き。理由などない。鶴見和子「内発的発展論」は一見社会学のようで教育学。自分に目覚めていく。他者との協同の中で創っていく。内発的発展論が自分にとってBIの始まりだと考えている。

今回の震災で、日本が迎えるであろう9年後の超高齢社会が東北に一気に来ている。今の限界集落、超高齢社会にどう向き合うのか。一人ひとりが内発的発展を自分の足下からどうするか。

               

               (参考文献/赤坂憲雄・鶴見和子『地域からつくる-内発的発展論と東北学』藤原書店)

 

 

 

資本主義精神の中の女性原理とは?             

                               高橋巖

 

 

アイスラーの『聖杯と剣』。支配的な権力による男性原理に則った剣の文化と、支配するのではなく、相手を思いやる原則を基本にする女性原理の聖杯の文化。この女性原理の文化がBIの思想そのものだと気づいた。『シュタイナー社会論入門』の最後に、「社会の主要法則」も含まれているシュタイナーのエッセイ「神智学と社会問題」を掲載した。この主要法則が生きている限りその社会は進化する、とシュタイナーはいう。

 

アイスラーの『ゼロから考える経済学』の本来のタイトルは『ケアリングエコノミクス』。BIは革命思想、社会を根本的に変革するエネルギーがある、ということをBIという概念なしに論じている。ケアリング=思いやり。生命への、自分自身、他者、地球への思いやり。

 

日本や世界の状況は、第三次世界大戦がすでに始まっていると言う人がいるくらい危機的。自然災害や、原子力発電の後始末ができないのに原子力エネルギーを中心にする政策など。

 

地球共同体そのものの未来を一緒に考えなければならない時代になったのではないか。

いつ地球そのものが破壊されるかわからないような時代の中で、根本的な考え方をどう変えていくのか。

しかもそれを同じ時代、同じ場所を生きている人びととどこまで共有できるのか、それが緊急に問われている。

 

そういう地球存亡の危機におけるBIという課題をこれからも御一緒に考えていきたい。

 

(参考文献=リーアン・アイスラー『聖杯と剣』(野島秀勝訳・叢書ウニベルシタス)、リーアン・アイスラー『ゼロから考える経済学』(中小路佳代子訳・英治出版)、『シュタイナー社会論入門―シュタイナーにとって社会とはなにか』(高橋巖『社会問題の核心』集中講義録・昴編集室)、小野一『緑の党、運動・思想・政党の歴史』(講談社選書メチエ))

 

 

 

 

 

吉祥寺講座

 

町田講座

 

 

「シュタイナー社会論入門」

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         高橋 巖  

         春秋社刊

     

『社会の未来』を読む

  京都で2009年6月~8月に

  行なわれた『社会の未来』

  の講義録

 

 京都での年末講演会

 2019年「社会の中の私、

       私の中の社会」

 2009年「社会の生命化と

    ベーシックインカム」

           も収録

 

『社会問題の核心』を読む

 京都で2010年6月~8月に行 

 われた『社会問題の核心』の

 講義録

 

   京都での年末講演会

  2022年「孤独と共同体」

               も収録

 

『人智学的共同体形成論』

 『共同体を人智学的に形成す

 るために』1923年

『秘教講義 クリスマス会議よ

 り三つの講演』1923~24年

 附録:日本人智学協会定例会基調講演

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